イチョウ

イチョウ(イチョウ科)[銀杏・公孫樹]

名の由来は、①中国名の一つ「鴨脚樹」の鴨脚の発音をヤーチャオと聞き、それがイーチャオ→イチョウに転訛した②葉が1枚であることからイチヨウ(一葉)の意③漢名の銀杏をイキャウ(唐音のインキョウの詰まったもの)と発音し、これが訛ってイチョウとなった④葉の形を蝶に見立て、イ(寝)ねたるチョウの意味、などが諸説あるが①が通説。
「銀杏」は種子が白っぽく、杏に似ているから。「公孫樹」の公は祖父の尊称で、祖父が植えてもその実を食べることができるのは孫の代になるということから。
属名Ginkgoは銀杏の音読みであるGinkyoがドイツ人ケンペルの著書「見聞記」で誤植され、リンネがそのまま用いたもの。種小名bilobaは「2裂した」の意で葉の形から。
イチョウ科の植物はジュラ紀に多くの種が繁栄したが、イチョウだけが生きた化石として生き残っており、1科1属1種。

古い時代に中国から渡来したといわれ、街路樹、公園樹として広く植えられる裸子植物で、雌雄異株の落葉高木。幹は直立し、枝は分枝して斜上し高さ30-45m、直径2.5-5mになる。寿命が長いたので社寺の境内などでは巨樹・名木となっているものが多く、天然記念物に指定されているものもある。青森県深浦町北金ヶ沢の大銀杏は日本一といわれ、樹齢千年以上、幹周り22mもある。

樹皮は淡灰褐色でコルク層が発達して厚く、不揃いに縦に割れ目ができる。老木ではときに乳といわれる気根が垂れる。若枝は淡緑色で無毛。よく分枝し、下部からひこばえが多く出る。
葉は長枝ではらせん状に互生し、短枝では束生する。長さ3-8cmの柄があって長さ4-8cm、幅5-7cmの扇形で浅く2裂するか波状になるが、若木では中央に深い切れ込みが入ることが多い。基部はくさび形で上縁は波状。薄い革質で両面とも緑色で無毛。脈は数回分岐して平行脈状になり、上縁に達する。秋に黄葉し、カツラとともに鮮やかに黄葉する樹木の代表。
花は風媒花で短枝に束生し、4-5月に葉の展開と同時に開花する。雄花は長さ2cmほどの尾状で淡黄色、多数の雄しべがらせん状につき、下垂する。雌花は緑色で上向する長さ2-3cmの細長い柄の先に裸の胚珠が2個つく、ふつうそのうちの1個が成熟する。種子は直径約2.5cmの球形で10-11月頃に熟して柄とともに落ちる。種子は土に埋めて粉白帯黄褐色で悪臭のある外種皮を腐らせて取り除く。外種皮はビロボールやイチョウ酸などを含み、直接触れるとかぶれることがある。白くて硬い内種皮は2-3稜があり、長さ1.6cm、幅1.4cmでこれをギンナンとして食用にする。

落ちた種子の外種皮が悪臭を放つため、街路樹では雄株が植栽されることが多い。材は淡黄色で軟らかいが、緻密で光沢があり、天井板、床板、将棋駒、碁・将棋盤、算盤玉などに利用される。薬用としては咳止め・去痰などに効ありという。葉を本にはさむと紙魚(シミ)除けになるという。
葉上に種子がつくものをオハツキイチョウという。普通は1個つくが、2個以上つくものもある。山梨県身延町の上沢寺や水戸市白旗山八幡宮のものが有名だが、各地に見られる。
花期:4-5月
分布:帰化植物
撮影:2008.11.23 東京都立川市
イチョウ-2
公園樹や街路樹としてごく普通に植栽される。 2008.11.23 東京都立川市

イチョウの葉
葉は短枝では束生する。 2018.4.16 千葉県鴨川市

イチョウの葉-2
先から黄葉してゆく。 2014.11.30 横浜市中区

イチョウの種子(ギンナン)
外種皮は粉白を帯びた淡黄色。さわるとかぶれることがある。 2022.11.24 横浜市中区

イチョウの樹皮
樹皮は淡灰褐色でコルク層が発達して厚く、不揃いに縦に割れ目ができる。 2014.11.30 横浜市中区

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