ショウブ

ショウブ(ショウブ科)[白菖・菖蒲]

名は「菖蒲」の音読みだが、これは本来セキショウの漢名であり、誤用。ショウブの漢名は「白菖」。ショウブは古くはあやめぐさとよばれていて、万葉集で「あやめぐさ」と詠まれているのは現在のアヤメではなく全て本種を指す。葉は似ていてもハナショウブ(ノハナショウブの園芸種)やアヤメとは全くの別種。
冬に根茎を採取し、よく乾燥したものを漢方で菖蒲根(しょうぶこん)といい、神経痛やリウマチに効く浴湯料や健胃剤とされる。端午の節句に軒にヨモギとともにショウブを挿したり湯船に浮かべて魔除けとしたのは、芳香と薬効が邪気や疫病を払うと信じられていたからだろう。
ショウブ属は旧分類体系ではサトイモ科とされていたが、APG体系ではショウブ属だけでショウブ科として独立した。

池や沼の岸辺や溝に群生する多年草。根茎は太さ1-1.5cm、白色で節が多く、横にはってよく枝分かれして長く伸び、多数の細いひげ根がある。
葉は厚みがあり、根茎とともに強い芳香がある。根茎から袴状に2列に互生し、長さ0.5-1m、幅1-2cmの剣状線形で先は鋭くとがり、明らかな中肋がある。秋に葉は枯れる。
花茎は根生して直立し、1個の葉状の苞がついた無柄の肉穂花序をつける。苞は長さ20-40cm、幅5-8mm。花序よりずっと長いので、一見すると葉の途中から花序が出ているように見える。肉穂花序は太い棒状の卵状長楕円形~長楕円形で、花時に長さ4-7cm、直径0.6-1cmで斜上する。花序は多数の両性花を密につけ、下から咲いていく。花被片は淡黄緑色で3個ずつ2輪、長さ約2mmの狭倒卵形。雄しべは6個で花被とほぼ同長で花時に葯のみが突き出る。葯は黄色で花糸は白色。子房は上位で3室。雌しべはやや6角形花被片よりやや長い。
日本産のものは3倍体で果実は実らないが、中国では果実が知られており、長楕円形の液果。

セキショウは葉の中肋が不明瞭で常緑。花序の直径は3-6mmで細長い。
花期:4-7月
分布:北・本・四・九
撮影:2023.4.19 神奈川県厚木市
ショウブ-2
花序の上側にあるのは葉状の苞。 2023.4.19 神奈川県厚木市

ショウブ-3
花は3数性。 2023.4.19 神奈川県厚木市

ショウブの葉
明瞭な中肋がある。 2023.4.19 神奈川県厚木市

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