キセワタ

キセワタ(シソ科)[被綿]

名は「被せ綿」で、花冠上唇外面に白毛が多いことによる。昔、重陽の節句(陰暦9月9日)の前夜、菊の花に真綿を被せて霜除けとし、重陽の当日に菊の香りと露の移った真綿で身を拭うと老いが去るとされ、これを「菊の被せ綿」あるいは単に「きせわた」といった。
日本に広く分布する植物だが、現在では目にする機会はごく少ない。環境省レッドリスト絶滅危惧Ⅱ類(VU)。

丘陵~山地の草原や林縁に生える多年草で、茎は4角形で硬く、下向きの白毛があってほぼ分枝せずに直立し、高さ0.6-1mになる。
葉は長さ1-3cmの柄があって対生し、長さ5-9cm、幅3-7cm。下部の葉は広卵形で縁に欠刻状の粗い鋸歯があるが、上部に行くほど小さく細くなり、鋸歯も目立たなくなる。先はとがり基部はくさび形~やや切形。
上部の葉腋に1-3個ずつ集まって花輪(仮輪)をつくる。萼は長さ1.5-1.8cmの筒状鐘形でまばらに粗い毛があり、やや等しい5歯があって先は針状になって斜開する。花冠は長さ2.5-3cmの唇形で紅紫色、下唇は3裂し、中央裂片は紅紫色で下に曲がる。上唇は分裂せず内面は紅紫色、外面は密に白毛があって白く見える。上唇の内側に4個の雄しべがあり、下側の2個が長い。
果実は4個の分果からなり、分果は黒色で長さ約2.5mmの倒卵状くさび形で3稜がある。

同属のメハジキは越年草で、葉は深裂~全裂し、裂片は線状披針形。花冠は長さ1-1.3cmと小型。
花期:8-9月
分布:本・四・九
撮影:2022.8.23 東京都八王子市
キセワタ-2
丘陵~山地の草原や林縁に生えるが今ではごくまれ。 2022.8.23 東京都八王子市

キセワタ-3
上部の葉腋に1-3個ずつ集まって花がつく。 2022.8.23 東京都八王子市

キセワタ-4
上唇は全縁で下唇は3裂し、中央裂片は紅紫色。 2022.8.23 東京都八王子市

キセワタ-5
上唇の外面には白毛が密生する。 2022.8.23 東京都八王子市

キセワタの萼
萼歯は針状。底に4分果が見えている。 2022.8.25 東京都八王子市

キセワタの葉
上部の葉(左)は小さくて細く、下部の葉(右)は広卵形で大きい。 2022.8.23 東京都八王子市

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