ハエドクソウ

ハエドクソウ(ハエドクソウ科)[蠅毒草]

根を煮詰めた汁で蠅取り紙を作ったのでこの名がある。
旧分類体系では1科1属1種であったが、APGⅢではミゾホオズキ属やサギゴケ属などもハエドクソウ科に含まれることになり、だいぶ仲間が増えた。

林の中や縁などの日陰に普通に生える多年草。茎は鈍い稜があって下向きの短毛が生え、直立して上部でしばしば分枝し高さ30-70cmになる。
葉は長い柄があって対生し、質は薄く深緑色で両面に短毛があり、長さ7-10cm、幅4-7cmの広卵形~楕円形で粗い鋸歯があり、基部は切形~心形で先は細くとがる。裏面の葉脈は細脈まで明瞭。
茎頂や枝の先に長さ10-20cmの細長い穂状花序を出し、対生した花を小さな苞の腋に1個ずつまばらにつける。花は下から咲き上がり、蕾は上向きで開花時に横を向く。萼は筒状で先は唇形となり上唇の先端に刺状のやや長い赤褐色の3歯があり、下唇には小型の2歯がある。萼は果期には伸びて長さ5-6mmになる。花冠は白く、上唇は淡紅色を帯びる。長さ7-9mm、幅約6mmの筒状で先は唇形、上唇は浅く2裂し、ふつう2裂した部分の両側に肩状の広がりがある。下唇は広く開いて3裂する。雄しべは4個で花筒内にあり、下側の2個はやや短い。葯は2室で縦に裂ける。子房は上位で狭倒卵形2心皮からなり、1室1胚珠がある。花柱は細く、先は2裂する。
果実は長さ5mmの蒴果で萼に包まれて下向きに茎に圧着して実り、萼の先端が硬くなってかぎ状に曲がり、イノコヅチに似て動物にくっついて運ばれる。種子は1個。

葉が長楕円形で基部がくさび形、花冠上唇の2裂した部分の両側に肩状の広がりがなく、花の盛りが少し早いものをナガバハエドクソウといい、関東地方南部で見られるのは主にそれが多く見られる。
花期:7-9月
分布:日本全土
撮影:1999.7.3 青森県八戸市
ハエドクソウ-2
花序は穂状。 2013.8.10 青森県八戸市

ハエドクソウ-3
花冠は唇形で上唇に紅紫色の斑紋がある。 2008.9.6 青森県三沢市

ハエドクソウ-4
ナガバハエドクソウと違って、花冠上唇の2裂した部分の両側に肩状の広がりがあるのが普通。 2022.8.8 神奈川県大和市

ハエドクソウの葉
下部の葉は幅が広く、長い柄がある。 2022.8.8 神奈川県大和市

ハエドクソウの葉-2
上部の葉は細長く、柄は短い。 2022.8.8 神奈川県大和市

ハエドクソウの果実
蒴果は萼に包まれて下向きに茎に圧着して実り、萼の先端が硬くなってかぎ状に曲がり動物にくっついて運ばれる。見かけはイノコヅチに似る。 2022.8.8 神奈川県大和市

ナガバハエドクソウに戻る イノコヅチに戻る


検索サイトからこのページへ直接お越しの場合は、 トップページへお回りいただきフレームを表示させてください。