ゼンテイカ(ニッコウキスゲ)

ゼンテイカ(ワスレグサ科)[禅庭花?]

名は、元はセッテイカ(湿った地の花の意)といったのがいつの間にかゼンテイカに転訛したという説や、戦場ヶ原を中禅寺の庭にたとえて禅庭としたという説があるが定説はない。
しかし、一般的には別名のニッコウキスゲといったほうが圧倒的に通りがよい。別名は日光の戦場ヶ原に多かったことによる。種小名esculentaは「食用の」という意味で、同属のヤブカンゾウなどとともに食用とされた。新芽を食べたことがあるが、ヤブカンゾウをさらに甘くしたような味だった。

低山帯~高山帯のほか海岸の草地にも群生するよく知られた多年草。根茎は太くて短く、匐枝は出さない。
葉は全て根生し、長さ0.5-1m、幅1.5-2.5cmの線形で2列に袴状に出る。鮮緑色で縁はざらつき両面とも無毛、主脈が目立ち、上半部は湾曲して垂れる。
葉の間から高さ50-80cmの花茎を直立し、先端に濃黄橙色の花を3-10個つけ、下から順に咲いていく。花に芳香はない。花は直径5-7cmの漏斗状鐘形で、花被片は6個で倒卵状披針形、下半部が合着して長さ1.5-2cmの花筒となる。裂片は平開し、先は少し反り返る。雄しべは6個で花筒の上端につき、花被片より短く、葯は紫黒色。雌しべは雄しべよりやや長い。雄しべと雌しべは上方に曲がる。花柄は長さ0.5-3cm。花序にふつう苞はない。
果実は長さ2-2.5cmの広楕円形の蒴果で、先は3浅裂し、中央はへこむ。種子は黒色で長さ5-6mmの卵形。

花は通常は一日花で、朝に開きその日の夕方にしぼむ。しばしば二日花のものも見受けられ、朝に咲いたものは翌日の夕方にしぼむ。いずれにしても次々に咲くので花期は全体として長い。
尾瀬の大江湿原、日光霧降高原、福島の雄国沼など多くの群生地があり、都会の人はわざわざ山中の人混みの中に出かけていって見るが、北海道や東北地方北部では海岸沿いの草地や湿った平地に結構普通に生えている。
地方によって変異があり、花柄がごく短いものをエゾゼンテイカとするなど、さまざま分けて考えられていたが、変異が連続的なことから全て同種とする考えも。
別変種のトビシマカンゾウは大型で花の数が15-30個つくもので、ゼンテイカの島嶼形と考えられている。
花期:6-8月
分布:北・本(中部地方以北)
撮影:2003.6.19 青森県八戸市
ゼンテイカ(ニッコウキスゲ)-2
三陸復興国立公園内の種差海岸に咲くゼンテイカ。※撮影時は県立自然公園。 2005.7.3 青森県八戸市

ゼンテイカ(ニッコウキスゲ)-3
標高20mほどの湿地。青森県ではまだこのような風景が多く残っている。 2010.6.18 青森県つがる市

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