ヤマブキ

ヤマブキ(バラ科)[山吹]

名の由来は諸説あるが、花をつけたしなやかな枝が風に揺れる様子から、「山振り」とよばれていたものが転訛したというのが定説となっている。

丘陵地~山地の谷沿いなど、湿気の多いところに普通な落葉低木。茎は細く、多数叢生し株立ち状になって横に張り出して先は枝垂れ、高さは1-2mになる。新枝は白点のある緑色で稜があり、のちに褐色の木質となりいぼ状の皮目ができ、3-4年で枯れる。根茎を伸ばして殖える。庭木や公園樹として広く植栽されている。
葉は互生して2列に並び、長さ3-10cm、幅2-4cmの倒卵形~長卵形で縁は浅裂し不規則な重鋸歯がある。基部は円形~やや心形、先は長く伸び、しばしば尾状になって先端は鋭くとがる。質は薄く表面は無毛で葉脈がくぼみ、裏面は淡緑色で葉脈が突出し脈上に白い伏毛がある。葉柄は長さ0.5-1.5cmで毛を散生し、基部に薄くて脱落しやすい長さ0.2-1cmの線形の托葉があり、縁に毛がある。
前年枝から出る短枝の先端に直径3-5cmの鮮黄色の花を1個ずつつけ、葉の展開とともに開花する。短枝は長さ3-4cmで小さな葉を数個互生する。花柄は長さ0.8-1.5cmで無毛。花は両性で花弁はふつう5個が平開、倒広卵形~円形で先は円く僅かにへこみ、基部は急に細くなる。雄しべは多数で花糸は花弁の半長で無毛。花柱は5-8個で長さ6-8mm。萼は無毛で萼筒は短く杯状、萼片は5個あり長さ4mmの楕円形で鈍頭、微細な鋸歯があり果期にも宿存する。
果実は長さ4-4.5mmの広楕円形で無毛の痩果。果柄の先に5個が集まってつき、9月頃に5個のうちふつう2-4個が茶褐色~暗褐色に熟す。種子は長さ2.5-3mmの半円形で淡褐色。

茎の髄は太く、白色で軟らかくニワトコの代用として顕微鏡用の切片を切り取るときのピスとして使われることもある。花や葉は薬用になり、利尿薬などとして用いられる。山吹色はもちろんこの花の色のこと。その色から大判小判の異名でもある。ヤマブキを図案化した紋所も抱き山吹、向こう山吹、山吹の枝の丸などがある。
江戸時代には多くの園芸品種があったが、現在は八重咲きのヤエヤマブキのほか、花が黄色っぽい白色のシロバナヤマブキ、菊咲きのキクザキヤマブキ、葉に白斑が入るフイリヤマブキなどが残っている。
ヤエヤマブキは雄しべが弁化したものでヤマブキより開花は遅い。太田道灌が鷹狩りの途中で雨に降られ、村の家で蓑を借りようとしたところ、その家の娘が兼明親王の古歌「七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき」という歌に寄せて「蓑」と「実の」をかけて、貧しくて貸し出す蓑もないとして黙ってヤマブキの枝を差し出したという少々でき過ぎの感のある逸話があるが、この山吹はヤエヤマブキのことで雌しべは退化して結実しない。
ヤマブキに似て自生の白花のものは、葉が対生し花弁が4個のシロヤマブキで別種。福井、岡山、広島、島根、香川県にまれに自生するが、広く全国の公園や庭園で観賞用に植栽されている。冬枯れの公園で4個の黒いつやのある果実がよく目立つ。
花期:4-5月
分布:北(南部)・本・四・九
撮影:2008.4.28 山梨県都留市
ヤマブキの花
雄しべは多数。花柱は5-8個。 2016.4.6 神奈川県逗子市

ヤマブキ-2
茎は多数出て株立ち状になる。 2015.4.16 横浜市中区

ヤマブキの葉
葉は互生。縁に不規則な重鋸歯があり、先はしばしば尾状に長く伸びる。 2021.3.19 横浜市南区

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