ヤクシソウ

ヤクシソウ(キク科)[薬師草]

「薬師草」といえば、かつて馬の病気の治療に用いられ、薬効あらたかなフナバラソウのことを指していたが、いつの頃からか本種の和名とされるようになった。ただ、薬師草の名をいただくほどの薬効がないことから、名の由来について諸説が語られることとなった。根生葉が薬師如来の光背に似ているから、薬師堂(どこの?)のそばで見つかったから、朝鮮での古いよび名に由来する、苦いので薬効があると思われていた、など多くの説があるが定説はない。なお、最近の分子系統学的な解析の結果、従来含められていたオニタビラコ属からアゼトウナ属に移された。

山野の日当たりのよい乾燥した道端の法面や崩壊地などに生える越年草。裸地化した林道沿いなどにいち早く生える先駆植物で、土壌が安定すると絶える。
茎は細くしばしば木質化して赤紫色を帯びて直立、よく枝を分け高さ0.3-1.2mになる。全体無毛。茎は切ると白い乳液を出す。
根生葉はさじ形で長い柄があって多数まとまってつくが、開花時にはない。茎葉は互生し、長さ5-10cm、幅2-5cmの長楕円形~倒卵形で縁に低い歯牙があり、下部の葉は有柄で上部のものは無柄。基部は円い耳状に後方に張り出して茎を抱く。質は薄くて軟らかく、裏面は粉白を帯びる。
頭花は枝先や上部の葉腋の散房花序に多数つき、直径1.5cmほどで上向きに咲く。頭花は10-13個の舌状花のみからなり、日が差さないと花を開かず、咲き終わると下を向く。総苞は暗緑色で長さ7-9mmの円柱形で花後に基部は膨れて硬くなる。外片は1列で短く、内片も1列。
痩果は黒褐色、長さ2.5-3.5mmのやや扁平な長楕円形で先が短く嘴状になる。冠毛は純白色で剛毛状。

若菜は食用となり、湯でさらして食べる。家畜の飼料にもなる。
葉が羽状深裂する品種をハナヤクシソウという。近縁のクサノオウバノギクは本州(栃木・奈良・三重県)、四国に生え、頭花は少なく葉は羽状全裂する。ナガバノヤクシソウは岡山県の石灰岩地に特産する多年草で、頭花は少なく茎葉は全縁で茎を抱かない。
神奈川県にはワダンとの種間雑種があり、ヤクシワダンとよばれる。
花期:8-12月
分布:北・本・四・九
撮影:2004.9.26 岩手県種市町
ヤクシソウ-2
日当たりのよい道端の法面などに生える。 2020.11.5 神奈川県横須賀市

ヤクシソウの花
頭花は舌状花のみからなる。 2006.10.22 青森県南部町

ヤクシソウの花-2
日が射さないと花を開かない。 2020.11.5 神奈川県横須賀市

ヤクソソウの葉
茎葉は後方に張り出して茎を抱く。 2018.10.16 東京都八王子市

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