ヤブコウジ

ヤブコウジ(サクラソウ科)[藪柑子]

名は、やぶの中に生え、葉の形や果実がコウジ(蜜柑類)に似ていることからついたもの。別名ヤマタチバナという。
APGⅡまではヤブコウジ科として独立していたが、APGⅢではヤブコウジ科は全てサクラソウ科に合一された。
正月飾りにマンリョウとともに利用され、センリョウ(千両)やマンリョウ(万両)に対してジュウリョウ(十両)の名でよばれる。では百両は何かというと、カラタチバナがその名でよばれている。カラタチバナの葉変わり品は江戸時代に数百両で取引きされ、ヒャクリョウの名はそこから来ているという説もある。
ヤブコウジも多数の園芸品が作られ、江戸時代や明治時代中期と大正時代初期に投機的な流行があった。庭園の下草として植えられる。薬用となり、茎や葉を煎じて利尿、鎮咳に用いる。
分布はやや南に偏っているが、この仲間では最も広範囲に広がる。照葉樹林帯に多い。

山地の林下や林縁に生える常緑の小低木で、長い根茎を引いて繁殖するが根茎の途中に葉はつかない。茎(幹)は分枝せず直立し、高さ10-30cmになる。茎や葉柄、花柄には垢状の微小な毛が密生する。
葉はほぼ無毛、厚くて硬くやや光沢があり、茎の上部に1-2層に3-5個が輪生状に互生する。長さ3-12cm、幅2-5cmの長楕円形で先はとがり基部はくさび形。縁に細かい鋸歯がある。葉柄は長さ0.5-1.5cm。
前年枝の葉腋から散形状の花序を出し、直径5-8mmの花冠の先が5裂した花を下向きに2-5個つける。花冠は白色~淡紅色を帯び、裂片は広卵形で小さな暗紫色の斑点が多数入る。雄しべは5個あり、葯は狭卵形で暗紫色の斑点があり先がとがる。雌しべは1個で葯の間から長く突き出る。
果実は液果状の核果。直径0.5-1cmの球形で、秋~冬に赤く熟し、食べられなければ翌年の開花期まで残る。

ホソバヤブコウジは、葉が狭楕円形。千葉県以西に生えるツルコウジは根茎のところどころに葉がつくこと、葉や茎に長軟毛が生えることなどで見分ける。
花期:7-8月
分布:日本全土
撮影:2016.7.1 神奈川県逗子市
ヤブコウジの花
雄しべの葯の間から雌しべが長く突き出る。 2016.7.1 神奈川県逗子市

ヤブコウジの果実
果実は長く残っている。 2016.11.17 神奈川県逗子市

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