テンニンソウ

テンニンソウ(シソ科)[天人草]

この花の名前を聞いた人は、さぞかしきれいな花が咲くのだろうと考えるだろうが、実物を見るとがっかりするに違いない。花は格別美しくもなく、葉も虫に食われてぼろぼろで、見るも無惨な姿をしていることが多い。
ところが、これがぴったりの名前なのだという。どういうことかというと、一説には、虫に食われて穴だらけになった葉を天人の羽衣にたとえたものとされ、「羽衣」は「破衣」から出た名前で、後の時代に羽衣と美称されるようになったという。これが本当だとすると、昔の人は随分ひねった名前をつけたものだと思うが、その想像力には感服せざるを得ない。ただし異説もある。

山地の林下や林縁に群落をつくる多年草。根茎は木質で、茎は4稜があり下部の茎は草質だが硬く、上部で枝分かれして高さ0.5-1mになる。若い茎に星状毛がある。
葉は柄があって対生し、長さ10-25cm、幅3-9cmの長楕円形~広披針形で若葉のときに星状毛があるがのちに無毛となる。縁に鋭鋸歯があり、先は鋭くとがり基部はくさび形で短い葉柄に続く。
茎頂に長さ5-10cmの直立した総状花序を出し、淡黄色の唇形花を密につける。花序の苞は鱗状で先が少し尾状にとがり、開花時に落ちる。花冠は2唇形で長さ8mmほど。上唇は浅く2裂、下唇は3裂し中裂片が少し大きい。下から開花し、4個の雄しべと柱頭が2分岐した雌しべが突き出てブラシのようになる。雄しべは4個で下の1対が長く、約1.5cm。萼は筒形で花冠より短く、5個の萼歯がある。
果実は宿存萼の中で熟す4分果で、分果はくさび形で稜がある。

葉裏の中脈上に顕著な開出毛があるものをフジテンニンソウという。ミカエリソウは半低木で、花は淡紅色。茎や葉の裏面に星状毛が密生する。
花期:9-10月
分布:北・本・四・九
撮影:2003.9.20 秋田県角館町
テンニンソウ-2
淡黄色の花を総状花序につける。 2000.9.10 仙台市青葉区

テンニンソウ-3
紅葉した秋の姿。 2020.9.29 山形市


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