タチツボスミレ

タチツボスミレ(スミレ科)[立坪菫]

坪は庭のことで、名は茎が立ち上がる庭のスミレの意。
最も普通に見られるスミレでしばしば群生する。人家周辺から道端や山地まで生育環境は広いが、春によく日が当たり、やがて日陰になるようなところを好んで生える。画像ストックはいくらでもあるのに毎年春になるとカメラを向けたくなる花。万葉集や枕草子の「つぼすみれ」はツボスミレではなく、本種ではないかといわれている。

根茎は短く、やや木化して横にはう。地上茎のあるスミレで、茎は数本が株立ちとなって分枝し、花期に高さ5-15cmだが花の後は30cmに伸びる。初めは地上茎が目立たず、無茎種に見えるが花が終わる頃に地上茎が伸びてくる。
葉は長さ2-4cmの心形~扁心形で低い鋸歯があり、先は下方の葉では鈍く、上方の葉では急にとがる。花や葉柄の付け根に櫛の歯状に深く裂けた広披針形の托葉がある。
花柄は無毛で長さ6-10cm、披針形の小苞葉が上部に1対あり、根生のものと葉腋から出るものがある。花は横向きに咲き、直径1.5-2cmで、普通やや空色を帯びた淡紫色だが変異が多い。萼片は披針形。花弁は5個で長さ1.2-1.5cmでやや幅が狭く、側弁は無毛。唇弁に紫色の筋があり、距はふつう紫色を帯び、長さ5-8mmの円筒形で細い。春の花の直後から秋にかけて茎の上部の葉腋に閉鎖花をつける。閉鎖花はほぼ確実に結実する。
果実は蒴果で、3裂して種子を飛ばす。蒴果は閉鎖花のものより解放花のもののほうが大きく、種子の数も多い。

白花品をシロバナタチツボスミレ、白花品で距にのみ淡紫色が残るものをオトメスミレという。赤紫色の花をつけるものは、サクラタチツボスミレという。葉脈に沿って赤い斑が入るものをアカフタチツボスミレといい、そう珍しくはない。茎、葉、花柄に白毛があるものをケタチツボスミレといい、青森県で見られるタチツボスミレはほぼ全てがこの品種だが、区別してよぶ人はいない。
よく似たオオタチツボスミレは、根元からは花茎を出さないことで区別できる。
シチトウスミレは、葉に光沢があり、葉や托葉が大きく、托葉は粗く裂ける。
花期:3-5月
分布:日本全土
撮影:2019.4.1 川崎市多摩区
タチツボスミレ-2
2019.4.2 横浜市中区

タチツボスミレ-3
しばしば群生する。 2023.4.6 川崎市多摩区

タチツボスミレ-4
距はふつう紫色を帯びる。 2015.4.6 横浜市中区

タチツボスミレの花
側弁は無毛。 2019.4.3 川崎市宮前区

タチツボスミレの葉
葉は心形。 2015.4.24 横浜市戸塚区

タチツボスミレの托葉
托葉は櫛の歯状に裂ける。 2019.4.3 川崎市宮前区

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