オトメエンゴサク

オトメエンゴサク(ケシ科)[乙女延胡索]

名は、北海道に分布するエゾエンゴサクに比べて花付きが少なく丈も小さめで、優しい感じがすることからついたものだろうか。別名ホンシュウエンゴサクという。
従来北海道のものも本州のものも同じくエゾエンゴサクとされていたが、分類学的な検討が加えられ、従来エゾエンゴサクの学名に当てられていたCorydalis ambigua Cham. et Schltdl.に相当する植物は日本列島には分布せず、日本列島には異なる2種が分布するのだという。それによると、一つはCorydalis fukuharae Lidénと命名され、本州中北部に分布(オトメエンゴサクと和名新称)し、また一つはCorydalis fumariifolia Maxim.の1亜種subsp. azurea Lidén et Zetterl.に相当するもので北海道に分布(エゾエンゴサクの和名踏襲)するものがそれに当たるものとされた(平成9年=1997年)。

湿り気のある林内、林縁に生える多年草で、地下の直径1-2cmの球形~卵球形の塊茎から茎を出し、高さ10-25cmになる。
葉は互生し、軟らかく、1-2回3出複葉。小葉は長さ1-3cmで全縁~3裂、鈍頭~円頭。形は長楕円形、広線形など多様な変化がある。
茎頂の総状花序に淡青色~淡紫色の花を一方に偏って数個~十数個つける。苞は卵形でふつう全縁。花冠は長さ約2cmの筒状。花弁は4個、上弁は長さ1.2-1.6cm、下弁は長さ1-1.2cm、基部は円柱形の距となる。距はエゾエンゴサクより細長く、基部から先に向かって細まらない円柱形になる傾向がある。距の中にある蜜腺も細長い。内側の2個の花弁は同形で先端で合着する。雄しべは2体6個。
果実は長さ2-2.5cmの線形の蒴果で熟すと2片に裂ける。種子は黒褐色で光沢があり滑らか。種子につくエライオソームによって、アリに散布されるのはほかのエンゴサク類と同様。

北海度に分布するエゾエンゴサクは、大柄で花付きが多く、距は基部が太く先に向かって次第に細くなる傾向がある。
ヤマエンゴサクは、花の付け根にある苞が切れ込むが、こちらは苞がふつう全縁。北海道のもの(エゾエンゴサク)は、花付きも多く大柄であるが、本種は花付きがやや少なめで、また少し赤みがさすものも多いのでヤマエンゴサクと間違えやすい。青森県には花が純白のシロバナオトメエンゴサクも多く、場所によっては青紫色のものと半々に生えている。
花期:4-5月
分布:本(中部地方以北)
撮影:2002.4.7 青森県南郷村
オトメエンゴサク-2
2008.4.6 青森県平内町

オトメエンゴサク-3
花色の赤味が強いもの。 2010.5.15 岩手県二戸市

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