オドリコソウ

オドリコソウ(シソ科)[踊り子草]

名は花の形を編笠をかぶった踊り子の姿にたとえたもの。

茎は束生し、断面が4角形で軟らかく、枝を分けずに直立し、高さ30-50cmになる多年草。節に長い毛がある。人里の半日陰の山野や道端に普通に生え、また高山の雪崩斜面の草原に生えることもあるが、その中間にはほとんど見られない。高山に生えるものを別種(キタダケオドリコソウ)とみる見解もある。環境に対する適応性云々ではなく、おそらく平地のものとは日本列島に入ってきた時期やルートが違い、高山に取り残されたものだろう。
葉は長さ1-5cmの柄があって十字対生し、長さ5-10cm、幅3-6cmの卵状3角形~広卵形、上部では卵形。縁に粗い鋸歯があり、基部は浅い心形で先はとがり、裏面脈上と表面にまばらに毛があり、網目状の脈が目立つ。
花は上部の葉腋に密に輪生してつき、花冠は長さ2.5-4cmで色は白色~淡黄色~淡紅紫色まで変化がある。筒部は基部でゆるく上方に湾曲して前面が膨らみ、大きく唇形となって上唇はかぶと状で縁に白色の長毛がある。下唇は反曲して側裂片はごく小さく、中央裂片は大きく、開出して先は2裂し基部は狭くなる。雄しべは4個で上唇の内側に沿って斜上し、下側の2個が上側の2個より長い。葯は有毛。柱頭は2裂する。萼は長さ1.3-1.8cmの筒状で10脈があり、5中裂して裂片はほぼ同大で斜開、縁に長毛がある。
果実は4分果で、分果は長さ3.3mmの倒卵状くさび形で3稜がある。種子はエライオソームがついていて、アリによって運ばれる。

オドリコソウには、甘い蜜を求めたハナバチが下唇を着地台として止まると、てこの原理で隠れていた雄しべが下りてきてハチの背中に花粉をなすりつけるという巧妙な仕組みがある。しかし大型のハチは盗蜜といって筒の横に穴を開けて蜜を盗み出す。さらには人間の子供たちが花冠を引き抜いて我先に蜜を吸うものだから、オドリコソウもたまったものではないだろう。
民間薬としては、開花期の全草を日干ししたものを打撲や腫れ物、腰痛、喀血、吐血などに利用する。
同じ仲間に帰化植物のヒメオドリコソウがあるが、越年草で花はずっと小さく、春早くから咲く。キバナオドリコソウは淡黄色の花をつける帰化種で、園芸用に栽培されるがときに野生化している。
花期:3-6月
分布:北・本・四・九
撮影:2008.4.28 山梨県都留市
オドリコソウ-2
花が淡紅色のもの。 2004.6.12 青森県小泊村

オドリコソウ-3
花が淡黄色のもの。 2003.5.3 埼玉県東松山市

オドリコソウ-4
花が白色のもの。 2019.4.9 神奈川県伊勢原市

オドリコソウ-5
花筒部は基部でゆるく上方に湾曲して前面が膨らみ、大きく唇形となって上唇はかぶと状で縁に白色の長毛がある。 2023.3.29 神奈川県平塚市

オドリコソウの萼
萼は筒状で10脈があり、5中裂して斜開、縁に長毛がある。  2023.3.29 神奈川県平塚市

オドリコソウの葉
葉縁に粗い鋸歯があり、基部は浅い心形で先はとがる。 2023.3.29 神奈川県平塚市

ヒメオドリコソウに戻る キバナオドリコソウに戻る


検索サイトからこのページへ直接お越しの場合は、 トップページへお回りいただきフレームを表示させてください。