ムサシアブミ

ムサシアブミ(サトイモ科)[武蔵鐙]

鐙(あぶみ)とは、馬に乗るときに足を掛ける金具のことで、武蔵の国で作られたものは鐙の端に刺鉄(さすが)をつける工夫がなされていた。この刺鉄が仏炎苞の先端の突起に似ており、そこで仏炎苞全体の形を「武蔵鐙」にたとえたものといわれる。
西日本では珍しくない本種は、関東地方でも公園でしばしば植栽されていて見ることは難しくないが、野生状態に見えるものがあったとしてもその全てが植栽由来のものだろう。

海に近い湿った林内や谷沿いに生え、高さ30-60cmになる雌雄異株の多年草。球茎から地下走出枝は出さない。
球茎から葉柄より短い偽茎が伸び、そこから葉柄と花柄を出す。葉柄は長さ15-30cmあり、葉はほぼ同大に2個つき、光沢のある3小葉からなる複葉。小葉柄はなく、小葉は長さ15-30cmの菱状広卵形で全縁、先は尾状に伸び、多くは糸状になり、糸はしばしば黒くなる。
葉柄の間から葉柄より短い花柄を出し、仏炎苞に包まれた白色の肉穂をつける。胚珠は3-4個。仏炎苞は暗紫色~白緑色で白く細い隆起する縦筋があり、舷部が袋状に盛り上がり、縁が巻き込んでさらに耳状に張り出し、先端は前方に突き出し、全体として鐙状になる。付属体は白色、棒状で長さ4-9cm、円頭で基部に柄がある。
果実は卵球形の液果で熟すと朱赤色となり、種子はほぼ球形。
花期:3-5月
分布:本(関東地方以西)・四・九・沖
撮影:2018.4.9 横浜市戸塚区
ムサシアブミ-2
偽茎は葉より低い。葉は2個。4個に見えるが後方の2個は別株の葉。 2007.5.5 東京都小金井市

ムサシアブミ-3
地上に姿を現して間もなく、花茎も立つ。 2020.2.20 神奈川県大磯町

ムサシアブミの葉
葉は3小葉からなり、つやがある。 2018.4.9 横浜市戸塚区

ムサシアブミの葉-2
葉の先は糸状に長く伸びる。 2018.4.9 横浜市戸塚区

ムサシアブミの若い果実
まだ青い果実。 2021.10.14 神奈川県大和市

ムサシアブミの果実
熟して倒れた果序。 2021.12.15 神奈川県藤沢市


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