イケマ

イケマ(キョウチクトウ科)[牛皮消]

アイヌではイケマの根茎を儀式や矢毒に使ったといわれ、和名は、その根茎をアイヌ語でカムイ・ケマ(「神の足」とか「大きな根」を意味する)とよんでいたものが転略したもの。「生馬」と書いてそれを馬の薬になるからというのは誤り。

山地の沢沿いなど湿り気の多い林縁や草地に生える多年草で、茎はつるとなって他の草木にZ巻き(上から見て反時計回り)に巻きついて伸び、長さ2-4m以上になる。茎葉を傷つけるとと白い乳液が出る。根茎はゴボウ状で地下で横に1-2mも伸びる。この太い根茎を乾燥したものを牛皮消根(ごひしょうこん)といい、利尿剤として利用されたが、特に白い乳液にシナンコトキシンなどの有毒成分を多く含むので、とても素人が試すようなものではない。一方で春先の新芽は山菜の王といわれるほど味がよく、お浸しやマヨネーズ和えにして食べる。
葉は対生して長さ3-6cmの柄があり、長さ5-15cm、幅3-11cmの卵形で、基部は深い心形、先は長く鋭くとがる。ほぼ無毛で裏面は淡緑白色。
葉腋から長さ6-12cmの長い柄を出して散形花序をつくり、長さ1-2cmで細い小花柄の先に白色の直径6-8mmの花を多数咲かせる。花序の柄は葉柄より長い。花冠は黄緑色で内面に白短毛が密に生え、5裂して裂片は長さ4-5mmで外側に反曲する。花冠のように見える副花冠は、白色で花冠裂片の間にあって5裂する。ラン科植物に見られるように雄しべは雌しべとともに蕊柱をつくる。雄しべは5個で、各葯室に1個ずつ花粉塊をつくる。
果実は長さ8-11cm、幅1cmの細長い袋果で緑色、表面は無毛。種子は扁平で長さ7-8mm、翼があって先に白く長い傘状の毛があり、風に乗って運ばれる。

コイケマは関東地方以西と四国、九州に分布し、全体に小型で花序の柄が葉柄と同長かそれ以下で、花冠裂片が反曲しない。葉はイケマより質が厚い。タンザワイケマは関東地方西部に分布し、イケマ同様花序の柄は葉柄より長いが、花冠裂片は反曲せずに斜上する。
花期:7-8月
分布:北・本・四・九
撮影:2004.7.25 青森県天間林村
イケマ-2
茎はつるとなって長く伸びる。 2004.8.1 岩手県山形村

イケマの花序
長柄の先の散形花序に白色の花を多数つける。 2004.7.25 青森県天間林村

イケマの花
花冠に見える白いものは副花冠。花冠は黄緑色で反り返っている。 2004.7.25 青森県天間林村

イケマの葉
葉の基部は深い心形で先は長く鋭くとがる。 2004.7.25 青森県天間林村

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