アブラギリ

アブラギリ(トウダイグサ科)[油桐]

名は、キリに似ていて油を搾ったことからついたもの。エゴマの油に似ているが有毒なので別名ドクエ(毒荏)という。
暖地の丘陵~山地で野生化しているが、本来の自生ではなく、古い時代に中国から渡来したものと推定され、江戸時代前期にはすでに栽培されていた記録がある。

雌雄同株の落葉高木で、幹は直立して高さ10-15mになる。樹皮は淡灰褐色で平滑、縦筋がある。若枝は無毛でやや太く淡緑色で褐色の皮目が多い。2年目には暗褐色になる。
葉は質はやや厚く互生し、長さ12-20cm、幅8-16cmの卵形~広卵形で縁に鈍鋸歯があり、基部は心形で先は短くとがる。上部が3裂するものが多く、特に幼木ではその傾向が顕著。切れ込みの底にしばしば腺が生じる。表面は深緑色で無毛、裏面は緑白色で5本の掌状脈の基部に褐色の毛があるほかは無毛。葉身の表面基部に有柄の腺点が1対ある。葉柄は長さ6-25cmで淡紅色を帯びる。
枝先に円錐花序を出し、雄花と雌花が別々に花序をつくる。雄花序は幅22-25cm。花は白色で直径約2cm。花弁は5個、長さ1.8cmの狭倒卵形で基部は初め淡黄色だがのちに紅色を帯びる。雄花の花柄は8mm、萼は長さ8mmの筒状で花時に2中裂する。腺体は長さ2.5mmで5個。雄しべはふつう10個あり、5個ずつ2列に並ぶ。内側の雄しべが長く、花糸の中部まで合着する。雌花序は小さく、幅9-12cm、花も少ない。雌花の腺体は長さ1.5mm、長さ4mmの楕円形で紫褐色の短毛を密生する。花柱は3個でそれぞれ2中裂する。
果実は直径2-2.5cmの扁球形の堅果で、3本の溝があって10-11月に熟すが裂開しない。種子は長さ約1cmの扁球形でふつう3個入っている。

近似種のオオアブラギリ(シナアブラギリ)とともに種子を搾った油はエレオステアリン酸を含む乾性油(空気中に置くとすぐ固まる油)で桐油(とうゆ)とよばれる。かつては灯火、油紙、和傘、雨合羽、提灯などに用いられ、その後ペイント、ニス、印刷用インクなどに使われた。有毒なので食用にはできない。材は軟らかく、下駄、木箱、家具の部分材などに使われる。木炭は漆器研磨に使われる。樹皮の浸出液はタンニンを多く含み、漁網の染料や革なめしに使われる。
オオアブラギリは、葉の裏面全体に黄褐色の細毛がある。葉身基部の腺は無柄。果実は直径4-5cmの球形で溝はなく、先がとがる。
切れ込みのない葉はイイギリの葉に似ているが、イイギリには葉柄頂部のほか葉柄基部付近にもそれぞれ1対ずつ蜜腺がある。
花期:5-6月
分布:帰化植物
撮影:2017.5.30 神奈川県横須賀市
アブラギリの花
花弁の基部は淡黄色でのちに紅色を帯びる。 2016.5.31 神奈川県横須賀市

アブラギリの葉
葉は3裂するものが多い。 2017.5.30 神奈川県横須賀市

アブラギリの樹皮
樹皮は淡灰褐色で平滑、縦筋がある。 2018.5.17 神奈川県横須賀市

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